恋の寿命

恋の寿命

日記

2018年の菅田将暉さん

突然ですが、私は菅田くんの話す言葉がとても好きで、かつ菅田くんの発言をとても信頼しています。それは、彼が自分の言葉に責任をもち、現状をふまえ将来を見て、メタ的に話すことができる人だからです。

 

今回、2018年に発売された雑誌をまとめようと色々読み返してみて、どんな内容でどんな形式にしようか悩みました。

そもそも菅田くんは役者なので、雑誌のインタビューでは、その時出演している作品や自分が演じている役について話すことが多いのですが、今回はそういったものは除き、菅田くんが菅田将暉について話しているものを抜粋することにしました。そのなかでも特に、個人的にきちんと胸にとどめておきたいなと感じた言葉がある6冊の雑誌について記しておこうと思います。

 

 

  • +act 2018年4月号

今年はっきりわかったことがあって。実家に帰った時に、もうそこには、いわゆる“〇〇(本名)”という人物は居なくて。完全に“菅田将暉”だったんですよ。(略)今までだったら、実家は休むつもりで帰っていたんですけど、今年はもう全然休む感じじゃなくて。これは大きな違いだなと思いました。

この後に「両親に甘えていてはいけない、自立しよう」という思いが強まったこと、もっと純粋に感謝して恩返ししなきゃなと改めて思ったことを話していました。

(2016年当時、)いわゆる“売れる”とか“人に知られる”ということは、同時にどんどん孤独との闘いになっていくってことを(感じた)。ここからの道っていうのは、まず孤独を受け入れることだと。ほら、よく言うじゃないですか。家から一歩出たら“菅田将暉”なのか、表に出る時……つまりはメイクしてからが“菅田将暉”なのかって。でも今は、家の中でも“菅田将暉”状態。

これは私にとってとても衝撃を与える内容でした。なぜなら、私は勝手に、菅田くんは、菅田将暉と(本名)の人格を上手く分けることができる人だとなんとなく思っていたからです。プライベートの時間に、気の知れた仲間たちと好きなことをしているような話もよく聞いたし、何より忙しかった時期に「意外と休みありますよ」「まだ若いので体力はあります」などとあっけらかんと話していたので、タフなイメージが染み付いていて、それがそのまま、プライベートの充実のように感じていました。でもだからといって、それが“菅田将暉”でない時間を過ごしているというわけでもなかったのだな…と。

また、私自身も菅田くんを応援するうえで、これまで“菅田将暉”という芸名を意識することが多々ありました。ずっと「私は菅田将暉を好きなのであって、菅田将暉でないプライベートの時間には興味がない」というスタンスで応援していたからです。例えば、私が菅田くんを好きだと聞いた知り合いが「私の友人が菅田将暉と知り合いだよ」とわざわざ教えてくれた時、私は瞬時に、いやだ!その話絶対に聞きたくない!と思いました。菅田くんの自己プロデュース外であるその時間の彼を知って、期待していた姿とは違うと落胆したくないと無意識に考えていたのかもしれません。そういう考え方をしていました。しかし、よく考えてみれば、そういった時間があってのこその“菅田将暉”像なのかもしれなくて、その時間を除外するのは違ったのか、そもそもそのプライベートの時間さえも“菅田将暉”であったのか、と今回の言葉を聞き混乱しました。

正直なところこれに関しては自分でも答えが出ていないので、今はせめて、菅田くんが2018年にこんな風に話していたということを忘れずにいたいと思っています。

そしてそれと共にもうひとつ。これは年明けの話になってしまうのですが、先日出演したしゃべくり007で菅田くんは「菅田将暉が芸名である」と話しました。そして「久しぶりに街で本名を呼ばれた」というエピソードを話しました。その話を聞き、どこかで、菅田将暉でない本当の自分(が何かというのは私も答えられないのですが)を取り戻そうとしているのかな……と感じました。これは完全に私のこじつけですが。

 

 

  • vivi 2018年5月号
ViVi 2018年?5月号【雑誌】

ViVi 2018年?5月号【雑誌】

 

僕が色んなことをやっているのは、人生の豊かさで考えたときに、そのほうが将来楽しそうだなって感じてたからじゃないかな、と。まあそれは、今思えばですけど。

音楽活動について話しているなかで出た言葉です。菅田くんが色々なことに挑戦するのは、自分の人生を豊かにするためだと聞き、改めてこの人は本当にすごいなあと思いました。菅田くんは、自分の人生を豊かにするための時間や労力を惜しまない人なんです。役者としてこれまでの仕事を評価され、この先も役者業だけでも挑戦できることはまだたくさんあります。それでも、その役者としての生き方以外を切り捨てないのが、菅田将暉なのだなぁと。

 

俳優って“ぽく”見せるのが仕事なんで。『帝一の國』で披露したピアノも、シーンとして成立しているだけ。あれは、帝一にとってピアノがこんなに大きな存在感なんだと分かればいいわけで、別にピアノが上手いのを見せるわけではないですから。だから、何でもできるようにしていたいけど、何もできないっていうことでもあるんです。

さらに、好きだった菅田くんの言葉がこれです。これを聞いて、はっとしました。役のためにできることはストイックにこなし、できる限りの準備をしてから芝居に臨む菅田くんがこれを言うことに意味があると思います。体重を増やし筋肉を鍛えたり、体重を減らし線を細くしたり、演じるために楽器を練習したり、スポーツを習ったり、難しい数式を覚えたり、髪色やメイクなど見た目にもこだわったり、現場に入る前に菅田くんはできることはしていきます。しかし、そこでどれだけ努力をしようとも、決してそれがゴールではないし、芝居はその努力を見せるための場ではありません。そのことを客観的に捉え、周りからすごいですねと言われると「いや、そうではないんですよ」と答える菅田くんが大好きだと思いました。

 

自分がアイコンなのかどうかは分からないけど、少なくとも僕が学生の頃は憧れる存在がたくさんいて、その人たちのファッションとか髪型を真似していた。自分がその人たちくらいの年齢になったら、そりゃ、そうありたいなとは思いますね。いい目標にならないと夢がないし、カッコ良くないというか。

ここでは「いい目標になりたい」と話していることだけを覚えておいてくれると嬉しいです。これを前提にこの後の記事について書くので、ここではそれについて飛ばします。

 

 

  • CUT 2018年11月号
Cut 2018年 11 月号 [雑誌]

Cut 2018年 11 月号 [雑誌]

 

(日本)アカデミー賞の最優秀(主演男優)賞をもらったんですけど、この映画賞を受賞したことはすごく名誉だし、他にもキネ旬キネマ旬報ベストテン 主演男優賞)とかいろいろいただいたりしてすごくありがたいんですけど、それがイコール自分の人生を豊かにするのかって言われたら、僕の中ではあんまりイコールにならなくて。まさにこの『生きてるだけで、愛。』に描かれているようなことなんですけど、幸せのあり方って結局人それぞれに違うものなんですよね。

前にも出てきた、人生の豊かさの話です。何が人生を豊かにするのか、満足を感じさせてくれるのかを突き詰めて考えると、それはプライベートで好きな人たちといる時間になる。だからこそ仕事に求めるのは、(プライベートで満たされる)個人の満足ではなく、責任を果たすことだと話しています。それが次の話。

自分のためだけに仕事をする時期でもなくなってきたのかもしれないです。(略)目立つ人になっちゃったからこそ、いい目立ち方をしないとってのはありますよね(笑)。どうせならいいもの見せていきたいから。

菅田くんは25歳、芸歴9年の俳優です。そんな彼が「自分のためだけに仕事をする時期でもなくなってきたのかもしれない」と話す重さ。この頃から菅田くんの口から語られる主語が「僕らの世代は」などと少しずつ大きくなってきたように感じています。何かキッカケになることがあったのかなあ。そして菅田くんがそんな風に話すことに違和感を感じないくらいの立場にまできているのだということを実感させられました。この世代を代表する俳優、いやもしかしたら日本を代表する俳優にまでなったからこそ芽生えた気持ちなのだろうなと思っています。

 

 

  • Numero 2018年12月号
Numero TOKYO 2018年12月号

Numero TOKYO 2018年12月号

 

(黙って何にでもすぐ「ごめん」と謝る男性について)

どっちが正しいという話ではないけど、津奈木を演じていて思ったのが、ガーッと責められると、本当に息をつく暇もないんだよ。それこそ息をしているだけで精いっぱいだから。(略)だから、お互いに呼吸をする時間がズレちゃうと終わりなんだなぁって感じがすごくしたなぁ。相手にも自分が呼吸してる分だけの時間を与えないとコミュニケーションにならないというか。

これは映画『生きてるだけで、愛。』で共演した趣里さんとの対談で、映画を観てから読むとまた感じることが違ってくるテキストでもあります。あの映画を作って感じたものをこんな風に言語化できる菅田くんをますます好きだと思いました。まさにそれ、なんですよねぇ。そして面白いのが、映画前半ではおそらく映画を見ている大半の人が津奈木の目線でいると思うんです。だから矢継ぎ早に話し豪速球の言葉を投げつけてくる寧子に息苦しさと諦めを感じてしまいます。けれど観ているうちに、いつのまにか自分の中に押し隠していた寧子の部分が呼び戻されていき、私の言葉に私と同じだけの熱量で答えてよ!という感情が爆発します。それが、菅田くんがここで言っている、呼吸がどちらかに偏ると、コミュニケーションのバランスが崩れていくということなんですよね。

『生き愛』は今年一好きな映画だったので、気になっているけれどまだ映画館に行けていない人はぜひ観ていただきたいです。1月から上映している劇場もあります!

映画『生きてるだけで、愛。』公式サイト 11/9(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

 

 

  • AERA No.53 2018年11月12日号
AERA (アエラ) 2018年 11/12 号 [雑誌]

AERA (アエラ) 2018年 11/12 号 [雑誌]

 

フィールドは選ばないけれど作品は選んでます。単純におもしろいと思うかどうか、そして『いまやるべきかどうか』。最近は特に、いまそれをやることの必然性や使命感みたいなものを強く感じます。

2016年の初めに菅田くんは「仕事は質だけでなく量をこなすことも大事」と話していました。そして、そんな時期を通過して2017年には「自分にとっての量が大事な時期というのが、もう終わったのかなと」と語っています。その時にも「今やるべき作品というものがある」と言っているのですが、2018年はそれの意味合いが変化しているような気がします。というのも、2018年の菅田くんの言葉を語る時「使命感」がひとつキーワードになるからです。前述した「いい目標にならないと夢がないし、カッコ良くない」はここでハッキリと「必然性」や「使命感」という、有名人としての意識の強さをより感じるものに姿を変えています。つまり、2017年に「今やるべき」は“自分にとって”の話だったのが、2018年の「今やるべき」は、“この時代や同世代の俳優を見て”「今やるべき」と感じるかどうかになっていると思うんです。そういった意味でも「使命感」は強い意味を帯びているはずです。

 

 

  • CREA 2018年12月号
CREA 2018年12月号[雑誌]

CREA 2018年12月号[雑誌]

 

最近は仕事に勝手な使命感みたいなものを感じているんです。たとえば戦争とか、伝えていかないと時代と共に消えていくことが映画では残せるし、演じる上で知ろうとした結果は伝えられる。表に出ている人間だからこそ、実践していかなきゃなって思います

ここでも「使命感」について話しているので、載せておきます。

 

 

JUNON 2019年 02月号

JUNON 2019年 02月号

 

まず『仮面ライダーW』でひとつ人生が変わって、『共喰い』で役者の人生が広がって、auのCMの鬼ちゃんで世間の認識がまた広がって、次がアカデミー賞の主演男優賞受賞ですかね。頭のなかにはざっくりとした“菅田将暉年表”みたいなものがつねにあるんです。だって、世の中に出ている“菅田将暉”は、これまでやってきた作品で構成されているわけじゃないですか。芸能界に入って“菅田将暉”という名前になって、僕はちゃんと自分で“菅田将暉”を作ろう、と思ったんです。だから、僕にとって“菅田将暉”は壮大なモノづくりに近いんです。

最初のころはバラエティ番組に出るとかとか、きれいな白いシャツを用意されて、“絶対に違うほうがいいです。そのシャツを着るのは僕じゃなくてもいいじゃないですか”って言ったけど、結局はその服を着て出演して、番組中ずっと気分が落ちてたこともありました(笑)

ここまで客観視できるところも菅田くんの好きなところです。何者でもない“菅田将暉”になるために、“菅田将暉”として生きていくために、未来だけでなく過去もこれまでの自分を構築したものだと受け入れ、忘れず、話すことができるのが彼のすごさです。菅田くんは、菅田将暉の演者でもありプロデューサーでもあるんですよね。どんな俳優を目指すのかというビジョンをマネージャーさんと明確にし、二人三脚で戦略を立てる、そんなストーリーの一部を“菅田将暉”として私たちは見せてもらっているのかもしれません。

そんな菅田くんがあちこちで今年はデビュー10周年になるので、と話しているので今年一年が楽しみで仕方がないです……!年齢もアラサーに差し掛かり、これまでとは違った作品へのアプローチも見られるのではないかと期待しています。昨年はdele、そして1月から始まる3年A組、と菅田くん自身がドラマの企画にも関わる機会が二度もありました。そのうちもっと好きなこと、やりたいことができるかもしれないと既にワクワクしています。

10周年、派手にいこうぜ!

 

 

6000字にも及ぶテキストまとめをここまで読んでいただき、ありがとうございました。今回書いてみて気づいたのは、映画誌やテレビ誌はその作品について話していることが多いので、菅田くん自身についての話が聞けるのは女性誌が多かったということでしょうか。もちろん、作品についての話を聞くことも大好きですが!笑

菅田くんの持つ言葉の強さが少しでも伝わっていれば良いなあと思います。

おわり。